親の不動産を売却しようと考えたとき、
「認知症の場合でも売れるのだろうか?」
というご相談は、実務の現場で非常によくいただきます。
病院で診断を受けているケースだけでなく、
「日によって受け答えができたり、できなかったりする」
といった、判断が難しい状態の方も少なくありません。
今回は、親御さんが認知症の場合の不動産売却について、実務の視点から分かりやすく整理してみたいと思います。
親が認知症の場合、不動産は売れるのか?
親御さんが認知症の場合、原則としてそのまま不動産を売却することは難しいのが実情です。
不動産の売買契約には「本人の意思能力」が必要とされており、売却の意味や契約内容を理解できない状態では、契約自体が無効と判断される可能性があるためです。
成年後見制度を利用して売却する方法
意思能力がないと判断される場合は、成年後見制度を利用して売却することになります。
成年後見制度とは、判断能力が不十分な方のために、家庭裁判所が後見人を選任し、その後見人が本人に代わって法律行為を行う制度です。
かつては申立から売却までに1年以上かかるケースも珍しくありませんでしたが、最近では比較的スムーズに進めば、半年程度で完了するケースも増えているという印象があります。
ただし、時間や費用がかかる点、また居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可が必要になる点には注意が必要です。
「認知症と診断されていない」グレーなケースは多い
実務では、
「医師から認知症と診断されているわけではないが、
日によって受け答えができる時とできない時がある」
という状態の方が非常に多く見受けられます。
また、契約時には問題がなくても、契約から決済までの間に判断能力が低下してしまうケースも実際にあります。
こうしたケースでは、登記を担当する司法書士と事前に面談を行い、意思能力を確認するという手法を取ることがあります。
特に、老人ホームや介護施設に入所されている場合は、この事前面談をお願いするケースが多いです。
面談では、
- ご本人の氏名・生年月日
- 不動産を売却する意思があるか
といった基本的な確認が行われ、問題がないと判断されれば、売却手続きを進めることが可能となります。
実際の取引経験から
これまで、正直なところ「大丈夫なのか・・・?」と不安になる取引を何度か経験してきました。
しかし、そのほとんどのケースで、結果的には問題なく決済まで完了しています。
過度に悲観する必要はないケースも多いと感じています。
生前売却を選ばれる方が多い理由
多くの方が、
「生前に不動産を売却し、財産を整理・清算しておきたい」
と考えています。
将来の相続を見据え、家族の負担を減らしたいという思いも背景にあるように感じます。
また、自宅であれば、3,000万円特別控除を利用できる可能性が高い点も大きな理由でしょう。
親御さんの認知症と不動産売却は、「うちはどうなるのだろう」と不安を感じやすいテーマです。
八潮市・草加市エリアで不動産の売却をご検討中の方は、状況がはっきり固まっていなくても構いません。
売却するかどうかを決める前の段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。



