こんにちは!
三共コスモスの南出です。
ここまで、【競売の種類と基本的な流れ】、【競売物件の購入条件と資料】について紹介してきました。
今回は、買受人に対抗できる占有者等がいるケースについて紹介していきます。
自己利用を目的として競売物件の購入を検討しているかたにとって、特に注意が必要な点をまとめています。
任意売却は不動産所有者が安心して売却できるように、競売は買受人に安心して購入してもらいたいという思いで書いています。
ご興味のあるかたはぜひ見ていただけると嬉しいです。
買受人に対抗できる占有者等
競売物件を検討している人のなかには、自己居住を目的として物件を探している事もあると思います。
自己居住目的の人には特に気をつけなくてはならないのが、買受人に対抗できる占有者等がいるかどうかです。
買受人に対抗できる占有者がいる場合、その物件を買い受けても、状況によっては占有者を追い出すことができません。
以下、代表的な事例について紹介します。
1.抵当権設定前から引渡しを受けている借主
賃借人が、抵当権の設定前に有効な賃貸借契約を締結し、かつ建物の引渡しを受けていた場合、その借主は競売による買受人に対しても借家権を主張できます。
このような借主は、賃料の不払いなど新たに賃貸借契約を解除するような事情が生じない限り住み続ける事ができ、更新も可能です。
そのため、自己利用を考えているような場合、このような物件を検討すべきではないでしょう。
2.短期賃貸借保護制度改正前から住んでいる借主
平成16年の民法改正前までは、短期賃貸借保護制度というものがあり、借家では期間3年以内の賃貸借のものに限り抵当権に対抗できるとされていました。
現在は建物明渡猶予制度になっており、一定の条件を満たすと競落から6か月間は住み続けることができます。
改正前から賃貸借契約を結び引渡しを受けている借主は、短期賃借権者として買受人に対抗することができます。
期限の定めのあるものは、差押え後に期限が経過するまで
期限の定めのないものは買受人から契約を解除されるまで
占有権原を買受人に対抗できます。
3.地上権
「地上権」とは、民法第265条に定められた権利で、建物、工作物(橋、トンネル、鉄塔など)、または竹木(樹木や竹)を所有するため、他人の土地を使用する権利を指します。
競売で起こり得る問題としては、地下の空間を目的とする地上権として、地下鉄施設所有を目的とするものが設定されている場合です。
地下鉄施設の所有者は、競売の買受人に対して、その地上権を対抗(主張)することができます。
これは、地上権が物権であり、土地の登記簿に記載されることでその権利が公示されているためです。
したがって、競売によって土地の所有者が変わっても、地上権の効力は何ら影響を受けず、地下鉄施設の所有者は引き続きその土地の地下部分を利用し続けることができるのです。
買受人は、地上権が付着した土地を取得することになり、地上権者の権利を侵害することはできません。
4.法定地上権
法定地上権とは、土地と建物が別人の所有となる際に、法律上当然に成立する地上権のことです。
要件:
・抵当権設定時に、土地と建物が同一の所有者に属していたこと。
・土地または建物、あるいはその双方に抵当権が設定されていること。
・抵当権の実行によって、土地と建物の所有者が別々になったこと。
例えば、Aさんが土地と建物を所有しており、その土地または建物に銀行から融資を受けるために抵当権を設定したとします。その後、Aさんがローンの返済ができなくなり、抵当権が実行されて土地が競売にかけられ、Bさんが土地を落札し、建物はAさんのままで残った場合、建物は土地を不法に占有することになってしまいます。これを避けるため、法律によって建物所有者(Aさん)のために地上権が成立し、Aさんは引き続きその建物を所有し続けることができるようになります。
法定地上権を有する建物所有者は、特段の事情がない限りその敷地を使用し続けることができます。
買受人はその間利用できず、地代を得ることしかできない土地を購入したことになります。
5.留置権
留置権とは、物の引渡しを拒むことによって債権を担保する権利です。たとえば、建物の修繕を行った者が、報酬の支払いがなされるまで建物の引渡しを拒否する場合などです。
この場合、買受人となった後の対象不動産の引渡しでトラブルになる可能性が高いです。
修繕費等についての必要費や有益費の償還請求権に基づく留置権が成立する場合、法律上、支出した費用の支払いをしない限り対象物件の引渡しを受けることができません。
6.地役権
地役権とは、ある土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用することができる権利です。
鉄塔や送電線のように、土地の上空を使用する地役権も、競売における重要なチェックポイントです。
買受人はこの地役権に従わなければならず、送電線を撤去するよう請求したり、その土地を自由に使ったりすることが制限される場合があります。
再建築の際は高さ制限や建築制限が課される場合もあるため注意が必要です。
7.土地上に売却対象外建物がある場合の収去
競売に出された土地の上に、売却の対象に含まれない建物(第三者所有建物など)が存在していることがあります。このような場合、土地を落札しても、その上の建物を自由に使用したり処分したりすることはできません。
建物所有者との話し合いがまとまらない場合、売却対象外建物を収去するには建物収去土地明渡しの訴訟を起こさなければなりません。
訴訟の場合、弁護士に依頼する事から費用と時間がかかるため注意が必要です。
物件明細書の重要性
上記で挙げた1~7の代表例のように、買受人に対抗できる占有者等がいる場合は、基本的にすべて物件明細書に記載されています。
競売物件は現状有姿での売却となるため、購入後にトラブルが起きても原則として自己責任です。
だからこそ、物件明細書をしっかり読み込むことが、後悔しない購入への第一歩です。
物件明細書は、裁判所の閲覧室やインターネット(BITなど)で誰でも確認できます。必ず現況調査報告書・評価書と合わせてチェックしましょう。
最後に
買受人に対抗できる占有者等について紹介しました。
公告書をみて極端に基準価額が低い場合、上記のような占有者がいる可能性が高いです。
物件明細書は必ず確認するようにしましょう。
法定地上権や留置権、地上権など、法律知識が少し必要な物件もなかにはあります。法律の事はイマイチ分からないという人は怪しい物件には触れない方が良いと思います。
そうは言ってもこの物件が欲しい!というかたは、専門家への相談をしてから最終的な判断をしましょう。
当社は八潮市を中心に、売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理・買取・空き家管理を行っています。
八潮市の不動産に関して、なんでもお気軽にご相談ください。