こんにちは!
三共コスモスの南出です。
前回のブログでは、競売不動産を購入しても使用する事ができない可能性のある【買受人に対抗できる占有者等がいるケース】について紹介しました。
今回は、買受人に対抗できない占有者がいる際の流れと追い出すことができる制度について書いていきたいと思います。
任意売却は不動産所有者が安心して売却できるように、競売は買受人に安心して購入してもらいたいという思いで書いています。
ご興味のあるかたはぜひ見ていただけると嬉しいです。
買受人に対抗できない占有者
競売不動産には、占有者(住んでいる人・使用している人)がいるケースが多くあります。
買受人として不動産を落札したからといって、すぐに自由に使用できるわけではありません。
占有者が正当な権利を主張するかどうかによって、対応が大きく変わります。
買受人に対抗できない占有者とは
「対抗できない」とは、占有者がその不動産に住み続ける・使用し続ける法的根拠がなく、買受人が退去を求められる状態を指します。
代表的な例としては、抵当権設定後に賃貸借契約を結んだ賃借人が挙げられます。
この場合、抵当権が優先するため、原則として買受人に対抗できません。
このような賃借人に対しては、明渡しを求める法的手続きを行うことができます。
短期賃貸借保護制度(旧制度)
かつては、抵当権設定後でも一部の短期賃借人(例えば3年以内の建物賃貸借契約など)には、買受人に対抗できる保護制度がありました。
しかし、平成16年の民法改正によりこの制度は廃止され、現在は原則として登記がなければ対抗不可となっています。
よって、現在の競売物件においては、抵当権設定後の賃借人は対抗できない可能性が高いといえます。
明渡猶予制度(現行制度)
短期賃貸借保護制度に代わって、現在は明渡猶予制度が適用されます。
賃料相当額を買受人に支払うことによって、所有権移転から6か月間は当該不動産を使用できるという内容です。
占有者が買受人からこの金銭の支払いを督促されたにもかかわらずこれを支払わない場合には、占有者は明渡しを拒むことができなくなります。
明渡猶予期間が過ぎても占有者が出ていかない場合には、下記の不動産引渡命令や強制執行を行う事で排除します。
占有者を退去させる方法:不動産引渡命令
占有者が任意に退去しない場合、買受人は「不動産引渡命令」を裁判所に申し立てることができます。
これは、競売による所有権取得者を保護するための制度です。
【申立てのポイント】
- 申立て期限:代金納付から6か月以内※
- 相手が正当な権利(登記付き賃借権など)を主張できない場合に有効
- 引渡命令が発令されても従わない場合は、強制執行(明渡し)へ移行
※明渡猶予が認められている場合は9か月以内
占有者を退去させる方法:強制執行
引渡命令が出て、占有者に正式に通知されても退去しない場合は、最終手段として「強制執行」を申し立てることになります。
強制執行とは、裁判所の執行官が国家権力のもとで、占有者を物理的に退去させる手続きです。
これは、裁判所の命令に従わない者に対して、法に基づいて実力行使を行う制度であり、競売における「買受人の権利を実現する最終手段」です。
強制執行の申立てから完了まで数カ月かかり、費用も10~50万円ほど発生します。
注意点
差押え後に占有者が変わった場合など、物件明細書の占有認定と違う占有者が存在するケースでは注意が必要です。
不動産引渡命令等の占有者を排除する手続きを取るためには、相手方の名前や住所を特定する必要があります。
たとえば、対象物件に荷物のみ置いて占有している者に対して引渡命令等の申立てをするには、その者の住所を把握しなければなりません。
また、相手方が法人である場合には、登記事項証明書を求められます。
そのような場合には、相手方の占有状況や交渉内容等を記載した報告書を別途作成し、提出しなければなりません。
ここまで行なっても、必ず引渡命令が発令されるとは限りません。
競売不動産を購入する場合には、このようなリスクと負担が発生します。
自分で引渡命令等の手続きを取ることに支障がないことを確認してから買受の申し出をする必要があります。
最後に
以上、買受人に対抗できない占有者がいる際の流れと追い出すことができる制度について紹介しました。
通常の売却とは違い、競売は所有者や債務者の意思に反して強制的に売却する手続きです。
そのため、本件で述べたようなリスクや負担があることを前提として買い受ける必要があります。
リスクを最小限にするためにも、3点セットと現地の確認は必ず行ないましょう。
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