こんにちは!
三共コスモスの南出です。
「駅の近くには高層ビルや商業施設が建ち並び、少し離れると戸建てやマンションが広がる住宅地に。さらに郊外へ進むと、倉庫や工場が立ち並ぶエリアに変わっていく──」
こんな街の風景、なんとなくイメージできませんか?
実はこの“自然に見えるまちの変化”は、きちんとルールに基づいてつくられています。
それが「用途地域」という都市計画上の仕組みです。
今回は、建物の用途や建てられる場所をルール化する「用途地域」などについて、わかりやすく解説していきます。
マイホームや投資物件を購入するにあたり、知っておきたい不動産の知識を紹介していきます。
お読みいただいた人に役立つ情報となれば嬉しいです。
用途地域は何のため?
都市計画法では、住みよいまちづくりを実現するため、全国を都市計画区域に指定し、それをさらに「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けています。
前回の記事で解説した通り、市街化調整区域では原則として建物を建てることはできませんが、市街化区域であっても自由に何でも建てられるわけではありません。そこに登場するのが「用途地域」というルールです。
市街化区域には、全部で13種類の用途地域が定められており、それぞれの地域に合った建築物だけが許可される仕組みになっています。
用途地域とは、建物の『用途』による地域区分です。
建築基準法では、用途地域ごとに、住宅、店舗、事務所、旅館、学校、病院、倉庫、工場など、建築可能な建物の内容を明確に定めています。
これを、『用途制限』といいます。
無秩序な開発行為を防止し、快適で住みよいまちづくりを目指すための法規制です。
■ 13種類の用途地域一覧表(名称と特徴)
分類 | 用途地域名 | 主な特徴と建築可能用途例(簡易) |
---|---|---|
住居系 | 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅中心。コンビニやアパートも難しい。 |
第二種低層住居専用地域 | 第一種に加え、小規模な店舗なども一部OK。 | |
第一種中高層住居専用地域 | マンション、病院、小規模店舗なども建築可能。 | |
第二種中高層住居専用地域 | 第一種よりもさらに用途の幅が広い。 | |
第一種住居地域 | 店舗や事務所併用住宅、小規模店舗なども可能。 | |
第二種住居地域 | パチンコ店やカラオケボックスなどもOK。 | |
準住居地域 | 幹線道路沿い。住宅も建てられるが、ガソリンスタンドなども可能。 | |
田園住居地域 | 農業との共存を目的とした地域。住宅・農業施設中心。 | |
商業系 | 近隣商業地域 | 住宅も可。スーパーや飲食店が集まる地域。 |
商業地域 | 百貨店、映画館、パチンコ店など幅広く許容。 | |
工業系 | 準工業地域 | 工場と住居が混在。比較的自由な地域。 |
工業地域 | 工場メイン。住宅も建てられるが注意が必要。 | |
工業専用地域 | 工場のみ。住宅・店舗などは原則禁止。 |
◆ 住居専用地域(第一種・第二種低層住居専用地域)
住宅地の中でも最も厳しい建築制限があるのがこの地域。
高さ制限も厳しく、コンビニすら建てられないケースもあります。
いわゆる「閑静な住宅街」に多く、『住む』に特化した地域です。
【例】郊外の住宅街や文教地区など。
◆ 工業専用地域
「作る」に特化した地域で、重工業や危険物を扱う工場などが立地。
倉庫や工場以外の建物は厳しく制限されます。
住宅や病院、学校、ホテルなど人が多く集まる建物は建てられません。
【例】湾岸エリアの工場地帯など。
◆ 商業地域
最も制限の緩やかな地域が商業地域で、一部の用途を除き、ほとんどの建物が建築可能です。
「営む」ことを目的とした商業系の地域は、経済活動の中心となる地域であり、幅広い用途に対応しています。
【例】繁華街や駅前エリア。
5年毎の用途地域の見直し
用途地域は、おおむね5年毎に見直しがされます。
特に制限の厳しい地域に変更される場合は注意が必要です。
用途制限はもちろんのこと、建ぺい率や容積率が変更されることにより、建替えの際に希望の建物が建築出来ないといった可能性があります。
● 用途地域変更の事例
【例】
ある地方都市で、幹線道路沿いの「第二種住居地域」が、「準住居地域」に変更された。
→ その結果、コンビニ・ガソリンスタンド・飲食チェーンなどの出店が増え、地域の利便性は向上。
しかし、騒音や交通量の増加により、住民からは苦情も…
● 将来の用途変更の見極め方
土地を購入する際は、「今の用途地域」だけでなく、「将来的な変更の可能性」も頭に入れておくと安心です。
調べかた
- 市区町村の都市計画マスタープランを確認
- 都市再生、再開発、立地適正化計画の有無を確認
- 周辺エリアの用途地域との境界線に注目(変更対象になりやすい)
用途地域をまたぐ場合は広い方の制限が適用
用途地域は土地単位で決められますが、ひとつの敷地が複数の用途地域にまたがっているケースもあります。
その場合、敷地面積が広い方の用途制限が適用されるのが原則です。
| 第一種住居地域(面積60%)|準住居地域(面積40%)
| → 第一種住居地域の規制が全体に適用される!
それぞれの用途地域に占める敷地面積を正確に把握しておかなければ、希望する建築物が建てられるかどうか判断できません。
まずは役所の都市計画図で対象地の用途地域を確認しましょう。
そのうえで、対象地と用途地域の位置関係が不明瞭な場合は、都市計画課等で用途地域境界線の位置確認申請を行なうことで、正確な位置関係を判断できます。
立地適正化計画について
用途地域ではないですが、住居・病院・福祉・商業施設の適切な立地を推進する都市計画として、「立地適正化計画」が注目されています。
立地適正化計画とは、少子高齢化や人口減少が進む中でも、「暮らしやすく、持続可能なまち」をつくるために市町村が定める都市計画のことです。
2014年の都市再生特別措置法の改正によって制度化されました。
草加市でも、令和4年から運用が開始されています。
● 目的=「コンパクトで効率的なまちづくり」
これまでのように郊外へ住宅地が広がる都市開発では、将来的にインフラ(道路・水道・バス路線など)の維持が困難になります。
立地適正化計画は、これを避けるために、都市の機能や人口をある程度のエリアに集中させることを目指します。
● どんな計画なの?
市町村は、以下の2つのエリアを設定します。
① 居住誘導区域
…将来的にも人が住み続けることを誘導するエリア。
住宅の建設を促し、公共交通やインフラの維持をしやすくします。
② 都市機能誘導区域
…医療、福祉、商業、行政などの都市機能を集約するエリア。
高齢者や子育て世代が暮らしやすく、生活に必要なサービスが身近にある環境を整えます。
● 具体的にどう影響するの?
- 新しく家を建てる場所に制限がかかることがある
- 助成金や支援制度が「誘導区域内」に限定されるケースも
- 区域外ではインフラ整備や行政サービスの優先度が下がる可能性も
たとえば、誘導区域の外に新築住宅を建てる場合、補助金が受けられなかったり、将来的に路線バスの運行が廃止されるリスクもあります。
●立地適正化計画まとめ
立地適正化計画は、これからの日本の都市にとって非常に重要な制度です。
「どこに住むか」ではなく「どこに住み続けられるか」を意識した住まい選びが求められているといえます。
土地探しや建築の計画がある方は、ぜひ一度、自分の希望する地域がどう位置づけられているのかを調べてみてください。
最後に
以上、用途地域の種類や仕組みなどについて紹介しました。
まとめ
- 市街化区域には13種類の用途地域があり、建築可能な用途が制限される
- 用途地域は5年毎に見直し。制限が厳しくなる場合は要注意
- 複数の用途地域にまたがる時は、面積が大きい方の制限に従う
都市計画にはさまざまなルールがありますが、その目的は「住みやすく、安全なまち」を守ることです。
用途地域や立地適正化計画といった制度は、将来を見据えたまちづくりの土台でもあります。
土地選びや建物計画の際は、今の利便性だけでなく、制度の内容や今後の変更の可能性にも目を向けておくことが大切です。
ポイント
用途地域を見れば、「この地域が将来的にどんな街並みになっていくか」をある程度イメージできる
上記の事だけでも覚えてもらえると嬉しいです。
次回は、建ぺい率や容積率についての解説をしたいと思います。
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